たほ日記

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断食デートに行ってきました

◆断食を始めるまでのいきさつ

※このブログを更新していない間に、彼氏が変わっている。

彼氏が太ってしまった。というか私と付き合い始める時点でかなり太っていた。付き合いだした当初から「痩せなアカン」が口癖になっている。

私は数年前の彼も知っているのだが、そのときは痩せているまではいかなくても普通体型で、身長も高いこともあって彼のことを坂口健太郎風のイケメンだと思っていたし、周囲からもそのように扱われていた。(今はなんというか、ダッフィーみたいな仕上がり)

たかだか付き合っているだけの私が彼の体型事情にそんなにコミットするのもよろしくないんだろうとは考えていたが、本人も自覚が十分にあるようだし、健康上の心配を含めせっかくならその頃に戻って欲しいとは思い、「断食でも行く?笑」と冗談まじりに持ちかけたら、偶然にも彼も断食に興味を持っていた様子。

おもしろそうだからとその場で日程を決め(1/11-1/13)、知り合いが行ったことがあると言っていた愛知県の断食施設を予約した。この手の施設は男女別室で過ごすことが大半だが、そこでは相部屋にできる。

ちなみに私も彼氏のことを笑えないくらいに太り始めていた。昨年夏あたりにジム通いをやめた瞬間ぶくぶくと膨れ上がり、それでも日頃の飲酒量は減らしていないし、グルメで大食な彼氏と付き合い始めてから、食事量も格段に増えた。

クリスマスあたりには、人生最大体重をしれっと更新しており、年始に会った家族にはトド呼ばわり。私も私で危機感たっぷりだったので断食イベントは渡りに船だった。

 

◆断食前夜

じわじわと迫ってくる断食の日。施設からは、「断食の1週間前くらいから食事量を減らしておくと更に効果的です」と連絡があったが、仕事上の付き合いもあり、食事をコントロールすることは非常に難しかった。

前日にいたっては、「明日から丸二日何も食べられないんだ」という突如出現した恐怖心に負け、昼には先輩と焼肉ランチに行き、夜は一人で回転寿司に赴いてしまった。挙げ句の果てにはその足でゲイバーに行き、「明日から断食に行くんだ」「当然酒も飲めないから今のうちに飲酒貯金しておかないと」「ああ〜なんだか怖い」とずっと体重100キロはあるだろうゲイ相手に嘆き続けた。

一人で飲んでいたはずなのに結構な額を払い、そのままトボトボと家路につく。

家で宿泊の準備をしていると、妙にデカくて重い荷物に仕上がってしまった。「ご飯も食べない旅なのに!」と妙に腹立たしかった。

 

◆断食1日目

午前11時に東京駅で彼氏と待ち合わせ。朝から何も食べていない。

少し遅れて来た彼氏は、ここ数日胃腸炎を患って何も食べていなかったらしく、この時点ですでに少し痩せていて笑った。新幹線で名古屋へ向かう。

13時前くらいに名古屋駅に到着し、ホームへ降り立った瞬間、立ち食いきしめんのお出汁の香りで二人とも瀕死状態に陥る。更に目の前に「カルボナーラきしめん」というポスターを見つけ、目が潰れるかと思った。

 

名古屋駅から名鉄、そしてバスを2本乗り継いで本当に本当に本当に山奥の施設にたどり着く。私は一応愛知県出身だが、こんなところ見たこともないレベルの山奥である。この時点で時刻は16時を回っており、移動だけで5時間かかった。

まずは職員の方から「断食とはなんぞや」という話を20分くらい聞かされる。(要は「断食で癌も治る」みたいな話で、正直あまり本腰では聞けなかった。)

そのあとは、もうひたすらに部屋で過ごすだけである。

案内されたプレハブのような簡素な建物の10畳程度の一室には、テレビ、こたつ、ソファ、布団、灯油ストーブがそれぞれちんまり配置されていた。二人の人間がただ時を過ごすには過不足ない設備だったし、当たり前だが周りも非常に静かである。灯油ストーブのスイッチを入れると、火が灯る音や匂いがなんとも懐かしく、しばらく何も考えずにストーブに足を近づけながら体育座りをしていた。彼氏の「そんな近づくと靴下燃えるで」という言葉も、昔おばあちゃんに同じことを言われたなあと思い出してしんみりした。

いわゆる「道場」ではないので、イベントごとはほとんど無い。辛うじてDVDを観ながら軽い体操をする時間が設けられていたが、体操している途中になんと急に生理が来てしまい、私は緊急中止。

朝から何も食べていない&生理というダブルパンチで、夜には完全に体力がなくなっていた。テレビをつけるとちょうど松本人志の「すべらない話」がやっていて、楽しく観て笑っても「あははははは、はは、はぁぁぁぁ〜〜〜・・・・」みたいに笑うだけで消耗してしまうし、かといって他のチャンネルに変えると美味しそうなご飯の映像などが映って心底悔しい思いをしてしまう。

頭も完全に働かなくなってくる。外に星を見に行って、さすがに山、東京よりもとっても綺麗に見えるはずなのに、「あれがオリオン座か〜〜〜」とわざわざわりとどこでも見れる星座ばっかりに注目して、それ以外については考えたり調べたりすることを放棄していた。

深夜は部屋で彼氏と「ぷよぷよ2」という五千年前くらいのゲームで対戦したが、連敗する(ちなみに普段は基本的に私が勝つ)。負けると気分が悪くて不貞腐れた気持ちになってくるし(これは普段からそう)、感情表現もだぶついてくる。コントローラー投げたりはしないけどね。

私が勝つまでぷよぷよを続け(彼氏には申し訳ないことをしたと思う)、就寝。

 

◆断食2日目

朝8時にアラームが鳴り起床しようとするも、頭皮が引っ張られているような頭痛に苦しむ。おまけに滅多にならない生理痛にもなり(人生3回目くらい)、動けない。もうひと寝入りすることを決める。

断食に伴う体調の変化について、色々と下調べはしていた。断食の先輩方のレポなんかを読み漁っていると、だいたい2日目で体調を崩す人が多いようだ。ただし、なぜか私は「自分は大丈夫だろう」という謎の自信があり、彼氏のほうが「オレ絶対に体調崩して寝込むし、最悪途中で離脱する気するわ」と話していた。

蓋を開けてみると真逆の事態である。おそらく断食に向けて少食にシフトする/しないの明暗が分かれたといったところだろう。前夜に食べた回転寿司を憎もうとするも、いくらの軍艦を思い出したただけで口内に涎が溜まる。絶望的に体調が悪くても、空腹は君臨し続けていた。

 

11時ごろにやっと体調を取り戻し、近所を散歩しに行く。水のきれいな川が流れていて、その脇に沿って歩く5キロくらいのコースを選んだ。

体力がないので5キロを1時間半くらいかけてゆっくりと歩いた。山の中といえでも普通に道路は整備されているし、民家もあるルートだったが、車通りはほとんどなく、なんなら人も全くみなかった。旅館のような巨大な一軒家などが立ち並んでいたたが、おそらくどこも空き家なのだろう。

色々と会話しながら歩いたが、彼氏が「自分用のパラシュートが欲しい」「最近はキャンピングカーの動画ばっかり観てる」と話していたことしか覚えていない。

散歩を終えて施設に戻り、入浴。(施設に浴場はないので、近所のホテルの大浴場まで向かう)断食中は倒れるおそれがあるので湯船に入ってはいけないらしい。私はどちらにせよ入れなかったが、彼氏は「湯船を目の前にして入らない自信がない」と嘆いていた。結局存分に掛け湯をして我慢したらしい。

入浴後、散歩の疲れもどっと押し寄せ、私は部屋でこたつに足を突っ込んで泥のように眠った。こんなに密度の高い昼寝(?)は何年振りにしたのだろうというレベルだ。

目を覚ますと、彼氏はラップトップを開いて仕事をしていた。覗き込むと見慣れたエクセルが繰り広げられており、「おえええ」とひっくり返ってもう一回寝転んだ。

このころから、空腹は臨界点に達していた。とにかくなんでもいいから胃に入れたくて仕方ない。

私も知って意外に感じたのは、断食中は喫煙は別にオーケーであること。施設に喫煙所が設けてあり、藁にもすがる思いで彼氏のピースライトを一本貰った。吸ってみると、これまで吸ってきたのと全く味わいが違って戸惑った。これは毎日吸っている彼氏にとってもそうらしい。草の香りが胸いっぱいに広がる感じで、大学生時代免税店でカートン買いした「ダビドフホワイト」の味を思い出して、エモくなった。(申し訳ないけどエモい以外の表現が見つからない、こればっかりは)

夜はiPadで「カメラを止めるな!」を観賞。見逃した話題作で、なかなかに面白かった。意図していなかったが、食事が全くといっていいほど登場しない映画で大変助かった。

そのあとは私のリクエストで「シン・ゴジラ」の「無人在来線爆弾」のシーンだけを繰り返し観た。私はこのシーンが大好きで、観ると元気が出る。

眠くなるまで読書して、就寝。存分に昼寝をしたにも関わらず、ぐっすり眠れた。

 

◆3日目

この日は部屋を片付けて帰宅するだけである。

朝、ついに回復食が食べられることとなった!!!!

メニューは炊いた玄米と味噌汁といったシンプルなメニューであるが、食堂から漂ってくる出汁の香りだけで感涙ものである。彼氏も感極まったような顔をしていた。2日間特に弱音を吐いていなかったが、彼は彼で空腹に苦しみまくっていたのだろう。

玄米は100回程度噛むことを推奨しますと告げられ実行を試みたが、辛抱うんぬんというよりもそもそも物を100回噛むという行為が出来なかった。何度試みても自然と喉に流し込まれてしまう。普段の食事の癖をこんな形で知ることになるとは。苦労する食事だった。

かなりの空腹と戦い続けていたので、あっさり完食。非常に美味しくいただけた。

 

食事後、部屋を片付け、帰宅の準備をする。

布団を畳んで持ち上げる作業があったのだが、これが大変しんどくて二人ともぜえぜえ言いながらやった。布団ってこんなに重たいのか!?ライフはもう0だった。

施設の人に挨拶をし、バスを乗り継いで名古屋まで戻る。途中でスープストックトーキョーに寄って食事をしたが、いつもはペロリと食べてしまうセットでも二人とも「これ以上は無理」と感じるほどの満腹になってしまった。彼氏が「オレ普段ならこれ二人前いけるわ」と話していたが、それはやっぱり普段食べ過ぎだよ、とは思った。

この後、名古屋ということで私の母が合流し、彼氏と三人でお茶をするという珍イベントが発生したが、あんまりここに書くような話ではないので割愛。

「私たち、頑張ったよね!!!」となぜかグリーン車に乗って東京まで帰った。アサヒスーパードライの350ml缶を二人で一本買い、車内で一口飲んだ瞬間で「うめえ〜〜〜〜〜!!!!!」と絶叫しそうになった。断食後の食事よりも、酒のほうがダイレクトに喜びを刺激してきた。

 

◆効果とまとめ

たった丸2日の断食ではあったが、二人とも体重は3キロ程度減っていた。

私は気になっていた下っ腹のお肉がしゅんと消えており、彼氏は顔まわりの贅肉がかなりすっきりとした。また、二人とも肌の調子が異様によくなり、断食中に撮った写真を見返すと、私はすっぴんなのに肌のトーンが1ランク上がっているように見えた。

さらにすごいと感じたのは、本当に胃袋が小さくなったのだろう、その後の食事量が自然と調整されるのである。断食明けの平日、普通にランチに出かけたのだが、いつも3秒くらいで食べ終わる定食が食べきれず、少し残してしまった。一緒に食べていた先輩に「そんなお前見たくないよ」とまで言われる始末である。

そこからは明確に基準は設けないものの「一日三食」にあまりこだわらない生活を続けている。調子はわりと良い。空腹に耐え抜いた事実が「食べない」ということをストレスにしないので、苦しくもない。

 

とはいえ断食をして、食というのは空腹を満たすや栄養を摂取するといった意味合い以上に「楽しみ」であることを大いに実感した。食事をしないだけで、1日の時間も大幅に余るし、何より退屈なのである。

先日は彼氏の家でトマト鍋(シメ無し、野菜のみ)をつついた。2人分の量で充分に満腹になった。鍋ならいつも二人で3.5人前は食べていたし、シメの雑炊までしっかり堪能していたことを考えると、なかなかの進歩である。

食後にキンミヤ焼酎のお湯割を飲みながら色々と会話をした。酔っ払っていたしそんなに中身のある話ではなかったが、断食中にはこんなにじっくりと会話はしなかった。(喧嘩なども全くしていないが)食でリラックスすることで、コミュニケーションもより滑らかになっている。

ただ、彼氏が何かを話出すときに「なんかさ、」で始まることが多いのは断食生活のなかでふと気づいた。静かな山奥の喫煙所で「なんかさ、」と言い出した横顔を、この先も思い出すのだろう。好きな人間のこういうところに気づけるのは楽しく嬉しいものだし、これは断食によって研ぎ澄まされたある種の勘が気づかせてくれたものだと思っている。

彼氏は今月中に禁煙外来にも行くらしい。本格的に健康に取り組む姿を見て、私もまたジムでも通おうかと考えている。

 

たった二日の断食で、あんまり後に続く人のためにもなるような内容ではないレポートでした。ただ言えるのは往復5時間かけてでも「とりあえず行ってよかった」と思えたことだ。今まで味わったことのない特殊な時間を過ごした。

断食はその気になれば自宅でもできるような行為だが、私はセルフでやることは絶対に出来ない。そのくらい、世の中は食の誘惑に溢れている。もし次もやるとするならば、断食施設まで赴かずとも、せめてコンビニも全くない田舎の宿で素泊まりするという形になるだろう。本当に本当に、お腹空くからさ…

 

断食中もずっと穏やかで親切だった彼氏と、日頃の食への感謝をこめ、今日も夕食は抜いて寝ることとする。