たほ日記

生活一般、読書、美容、恋愛など

エンジン

春コミお疲れさまでした。もしこれを読んでいる方でスペースにお立ち寄りいただいた方がいらっしゃれば、ありがとうございました。お陰さまで、新刊のコピー本は完売いたしました。(ごく少部数ですが。)

 

ブログの更新に20日ほど間があいてしまったが、ブログを書く暇が無いくらい忙しく、そして充実した20日間であった。

やっぱり、同人イベントほど面白い活動は無い気がする。春コミで購入した数冊を今読み終えたところだが、どれもハズレなしで素晴らしく、久しぶりに二次創作で心が揺れる感覚を得て幸せな気持ちになった。

二次創作の良さは、親友と話す恋バナ(死語か?)のような愉しみだ。見ず知らずの人の作品であっても、共通の友人がいるようなもので「そうそう、この人そういうところあるよね〜〜!」と気持ちが盛り上がる。本屋で小説を選ぶというとは違う感覚で、「話の合う友人」の本を買いたいと思う。その中でその人の画力や描写力、あるいは言葉選びのセンスといったものに感嘆し、共鳴し、影響されてまた自分も書きたくなるというポジティブな循環へと繋がっていくのだ。

先日の春コミでは、私の書くものが好きだと言ってくれた人などもいて、とても励みになった。創作活動の内容に限らず「私」を好きだと言ってもらえているような気がした。(言ってくれた人がそういう意図ではないというのはもちろん自覚している。)なぜなら、二次創作であれなんであれ、私が書いたものは確実に私の命が吹き込まれいてるからだ。

 

今回の芥川賞を受賞した町屋良平「1R1分34秒」はとても素晴らしい小説だった。この良さについてずっと考えているのだが、なかなかうまく言語化できていないので、もし興味がある人は読んで私に感想をぜひ聞かせて欲しいと思う。

これは拳闘小説なのだが、先日新聞を読んでいたら作者の町屋良平氏が「ボクシングと小説の親和性」について、「自分の体から表現されたものがどうなっているのかを毎日確認しながら積み重ねて行くところ」と話した、とあった。私はこの言葉が心に残っている。小説を書くという行為について、自分の「体」から発信されているとは今まで考えたことがなかったからだ。

この言葉を踏まえて「1R1分34秒」を読んでみると、なるほどフィジカルの強い人間から培われた物語や言葉がそこにあるように見えてくる。たまにニュース番組でスポーツ選手のインタビューなんかを流し見していると、急に心が捉えられる言葉が飛び出して来ることがある。私が一番良いと思ったのが、卓球の福原愛選手(もう引退してるけど)が、団体戦の主将として心がけていることについて「選手みんなの心の温度を同じに保って行くこと」と答えたものだ。技術や勝負強さ、あるいは身体性といったものは心によって裏付けされていることを熟知した言葉であり、スポーツについてはてんで素人の私のとっては新鮮に響いた。

掃除機をかける、電車に乗り遅れないように走る、食事をする、電卓を打つ…そういった私の日常での肉体のはたらきが物書きする場面でも当然作用していて、同時に文字として残るという意味で書くということは特別だ。よく作家が自分の作品を「分身」と表現することがあるが、私の中でこれがより真実味を伴ってきている。

 

正直なところ、私は自分に文才があるとは思えない。面白いシチュエーションや誰にとっても分かりやすい文章というものは頑張れば書けるかもしれない。ただ残念ながら、読んだ人にぐさっと刺さってその人の日常のなかでしばしば思い出されるようなものを書く技術や才能は足りていないと思う。これは私が日々プロでもアマでも色々な人の書いた文章を意識的に読んでいるなかで得た実感でもある。

でも、もし私に長所があるとすれば、書くということに対するエンジンは常に回っているということだ。このブログを書いていても、次はこれ、次はあれについて書きたいなとどんどん考えが膨らんでくる。たまに思うことがあってこのエンジンが切れそうになることがあるが、このときの自己嫌悪はなかなかのものである。ベッドに座ってぼんやり涙を流しているだけの時間は、どこか勿体無い。

 

嬉しいことに、昨日は私のこのブログを読んでいると言ってくれた人にも出会うことができた。何か具体的な夢があって書いているわけではないが、「あれよかったよ」と面と向かって言ってくれる人に出会えるのは夢のような出来事である。

 

春コミはペダルでスペースを出したけど、次はヒプマイで夢小説か何かやってみたいなあ。一二三が女から巻き上げた金で買った食材で、独歩のあのほっそい身体が出来上がっていると想像すると、何か形にせざるを得ないように思う。そして、二次創作じゃなくて自分のオリジナルの小説というのも書きたい。実はこれは今まで何度も試みているけど、ちゃんとしたものが出来上がったことはまだ無い。次こそは自分の肉体を信じてリベンジしたいと考えている。